オリジナル創作 「おじさんロイド」 第3話


初めていらっしゃった方で今後も遊びに来てやろうかと思って下さる大変奇特な方は是非「ぼくようびのトリセツ」(https://blogs.yahoo.co.jp/uzukinokimi/36144883.html)も合わせてお読みください。
ちょくちょくお越しいただいている方も、結構頻繁に更新していたりするのでたまーに見返していただけたらありがたいです(^ω^)
随時コメント大歓迎!忌憚のない感想をお寄せいただければ幸いです♪


 



 マナブが来て1カ月。
 製造元の会社・クロノス社に初のモニター調査に訪れた。
 
 
 応接室の前。

 マナブ「私はこれから定期点検がありますので。終わりましたらお迎えにあがります」

 香織「わかりました」
 


 博士「マナブが来てから一か月。どうですか?生活は」

 香織「はい。初めはどうなることかと思っていましたが、思いの他快適です。今まで働きながら身の回りのこともこなさなきゃいけなかったのが、ほぼ全て彼にやってもらえるようになって、仕事に専念でき、プライベートタイムも確保できるようになりました」

 博士「それはよかった。私も開発した甲斐がありましたよ」

 香織「でも、不思議なんですよねー。“感情は持っていない”っていくら聞かされても、そんな風にはどうしても思えなくて…」

 博士「無理もありませんよ。“まるで感情があるかのように”作ってありますから。人工知能が…」

 香織「瞬時に計算して、ふさわしい言動を取るんですよね?」

 博士「その通りです。よくおわかりじゃありませんか」

 香織「えぇ。仕組みは理解できるんですが…。でも、『おじさん』って言ったらえらい剣幕で怒るんですよ!」

 博士「ははは。それは計算じゃなくて、最初からそういう反応をするようにプログラムしてあるんですよ」

 香織「はい?」

 博士「遊び心、ですよ」

 香織「なんだ、そういうことだったんですねー。でも、体つきも生々しいというか…」

 博士「触ってみたんですか?」

 香織「は?い、いえ、ちょっとぶつかったときに?柔らかくてびっくりしただけで、そんな能動的に触る、とかはしてませんよ」

 博士「それも、より人間に近づけるために特殊なシリコンを使用しているからですよ。でも、服で隠れてる部分は機械そのものなんですよ」

 香織「それも本人から伺いました」

 博士「そうですか。的確な受け答えですね。なかなかうまく作動しているようだ」


 ドアがノックされる。博士が促すと、マナブが入って来た。

 マナブ「香織さん、終わりました」

 博士「何か異常はなかったのかね?」

 マナブ「特に無いとのことでした。少し汚れていたので、軽く掃除してもらいました」

 博士「そうかね。それは何より。それでは、こちらからの質問も以上ですので、また来月お願いします」

 香織「わかりました」


 その日の夜。

 香織「おやすみ、マナブくん」

 マナブ「おやすみなさい…あの」

 香織「なんですか?」

 マナブ「今日は充電モードに切り替わる前に、抱きついてもらえませんか?」

 香織「え?き、気づいてたんですか!」

 マナブ「えぇ。充電モードでもうっすらとは」

 香織「でも、何で?」

 マナブ「充電モードでは人工知能の計算も行われません。通常モード時に抱きつかれた場合、どのような計算結果をはじき出すのか…知りたいのです。アンドロイドとして」

 香織「そ、そういうことなら…」

 恐る恐る抱きつく香織。
 頭をやさしくなでるマナブ。

 香織「それが、人工知能がはじき出した最適の行動、ですか?」

 マナブ「そのようですね」

 ハッと我に返り、マナブから離れる香織。

 香織「あ、明日早いんで、もう寝ますね」

 自分のベッドにもぐりこむ。

 マナブ「それは、『早くなければ、まだ寝ない』という意味、ですか?」

 香織「は?」

 マナブ「いえ、すみません。明日早いんでしたね?おやすみなさい」
 

 翌朝。

 寝ている香織をマナブが起こす。

 マナブ「おはようございます」

 香織「ん?まだ5時半じゃないですか…」

 マナブ「昨夜、『明日早い』とおっしゃっていたので。どの程度早いか伺うのを忘れていたので、とりあえず通常時の30分前に起こしたのですが…」

 マナブの言葉に昨夜の記憶が一気によみがえっていて、香織の心には恥ずかしさと照れくささが押し寄せた。そして、瞬時に目が覚めた。

 香織「お、お気づかい、どうもありがとう。た、助かりました」

 マナブ「それは何よりです」


 その日の夜。

 就寝時間が近づくと、香織は動悸を覚えた。スル―するのも変だし、かといって通常モードのマナブに抱きつくというのは、やはり少し気が引けた。相手はアンドロイドなのだ。心配する必要はない。相手はこちらが忖度しなければならない“気持ち”など持ち合わせていないのだから…。

 マナブ「どうかしましたか?」

 香織「へ?」

 マナブ「先程から、顔色が優れませんが…」

 香織「え?いや、何でも、ありませんよ」

 マナブ「そうですか?そろそろお休みになった方がいいのでは?」

 香織「あ、は、はい」

 マナブ「声が裏返ってますよ。余程の心配事があるようですね」

 香織(その原因はお前だー!)

 おもむろに抱きつくマナブ。

 マナブ「大丈夫ですよ。大抵の心配事は寝たら落ちつきます。リセットできるのは、人間も同じです」

 香織「な、何するんですか!」

 マナブ「私はお手伝いアンドロイドです。あなたの望むことをするのが私の役目です」

 香織「べ、別に…望んでなんかないですよ」

 マナブ「では、何故今私にしがみついているのですか?」

 香織「か、勘違いしないでくださいね?」

 マナブ「はい?」

 香織「私、お父さんの記憶がないんです。それで、マナブくん見てたら『お父さんってこんな感じなのかなー』って。だから、あなたが好きだとか、そういうんじゃないんです。私、彼氏だっているし、それに…」

 マナブ「勘違いなどしていませんよ。そもそもアンドロイドは感情を持ち合わせていません。それに、安心してください…」

 香織「性的興味もプログラムされていない、ですよね?」

 マナブ「ザッツライト」

 場違いな英語に思わず吹き出す香織。

 香織「何で英語なんですか?」

 マナブ「緊張緩和アプリが作動したようです。博士、こういうの好きなんですよねー」

 香織「遊び心、ですか?」

 マナブ「えぇ。あ、そろそろ寝なくて大丈夫ですか?」

 香織「あぁ…もう少しこのままでいてくれませんか?明日は早くないので」

 マナブ「ラジャー」

 香織「2回目はあまりおもしろくありませんね」

 マナブ「失礼しました」

 香織「そこは『ソーリ』でしょ」

 マナブ「なるほど。やはり感性という点においては人間には敵いませんね…」


 一人と一台は抱き合ったまま小一時間程おしゃべりをした。そして、翌日以降寝る前の“おしゃべり”は習慣となっていった。
 
 香織は自分の生い立ち、彼氏、友人、職場の愚痴などを話した。マナブは大抵は聞き役に徹し、ところどころアドバイスをしてやった。必要とあらば、対策法を検索してやったりもした。


~続く~


次回、遂に香織の恋人・崇史が登場!
二人と一台の奇妙な三角関係が繰り広げられる!かも?

照れ臭いのであとがき省略!

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