陶酔者のバラード

何故 斯様にも架空の人物に 想いを寄せられるのだろう

実在はしているが 人生が交差することは決してない

それはまるで実像から浮かび上がった幻影を 私の理想で縁取った虚像

貴女の彼と私の彼は微妙に それでいて確実に他の者

しかしそれは 現実の恋においても同じ

相手を知らずに恋に落ち 相手を知って夢から醒める

知る術のない恋は 結末の無い一人芝居

観客もなくただ一人 己が芝居に酔いしれ自惚れる喜劇役者

時折襲いかかる圧倒的孤独を凌駕する この上ない幸福感

それには心地良さと共に 無情な寂しさが伴う

それでも役者は一度舞台に上がったが最後 命尽きるまで演じ続ける

馬鹿馬鹿しくも愛おしい 恋の喜劇を