ぼくようび~正名僕蔵さんファンブログ~

更新停止してるのに日々たくさんの方にお越しいただいていて、本当に感謝です(ㅅ´꒳` )

映画 死に損なった男(2025)

⚠️ネタバレ注意です⚠️

 

 

 

この映画を一言で現すと

「仕事で疲弊しきった男が三点目を見つけて救われる話」

と感じました

 

知り合いがいないわけではないものの、心を開ける友人も彼女もなく、家と仕事場の往復だけで虚無感を抱いていたところに“幽霊”という第三の存在が現れ人生が上手く回り始める

 

ストーリー的には丸く収まっていてモヤモヤ感はほとんど残らないものの、救済の存在が幽霊ってどうよ?という一平に対する発展途上感が残るラストで、「これ多分森口先生が全く姿を現さなくなって、そのことにも気がつかないようになった時がこの物語の真のハッピーエンドなんだろうな」という余韻を残しているところが秀逸だなと思います。

 

モヤモヤ感が“ほとんど”残らない、としたのはDV夫・若松の扱いに対してで、個人的には「ホントに再出発出来んのか、コイツ?」という不信感しかないのですが、思えば見ず知らずの、しかも「幽霊に殺害依頼されている」という、常軌を逸した発言をする男の血液を顔面で受け止める程のショッキングな経験をしたら、生まれ変われるのかもしれないな、と思えなくもないですかね。

再出発の件の森口先生の1ミリも信用していない無表情が笑えました。

 

それにしても、こんな上手く終わらせる作品ってちょっと珍しいなと。

途中まで良くても、なんか釈然としなかったり、変に奇を衒って裏切られた気分になったり、後味の悪い余韻を引き摺ったり、まぁそういう映画って少なくないですよね。

そしてバッドエンドに逃げないのが非常に良かった。

簡単なんですよね、バッドエンドって。

私みたいな素人はバッドエンドについ逃げちゃって、登場人物たちを散々酷い目に遭わせて来てしまって、謝罪の言葉も見当たらないくらいです。

ハッピーエンドって難しいんですよね。

どうしても弱くなっちゃう。

ごんぎつねだって、死んじゃうんです。

 

でも、本作は不完全ながらみんな前を向いて生きていく予感のあるラストだからこそ、観客も彼らと同じように前向きになって足取り軽やかに劇場から出て行くことができる。

エンタメとして見て満足して終わり、じゃないところがこの作品の素敵な点なのではないでしょうか?

 

因みにもしも私がこの物語の作者だとしたら、一平が生きることに前向きになって、自殺しようなんて微塵も思わなくなった時、駅のホームで森口先生と同じように靴紐に引っかかって転落死する、なんて意地の悪いラストを思いついたことでしょう。

森口先生のとても悲しそうな「関谷一平よ…」でブツっと切れる。

 

こういうブラックなのが好きな人もいるかもですが、ふとした時に思い出して勇気を貰える、なんてことはありえません。

 

最近は、予定調和から外れる、視聴者の予想を裏切ることばかりに執心して大事な部分が疎かになっている作品が目立つような気がします。

確かに裏切られる快感、というのはあるのですがあまりそればかりに注力されても、暇つぶし以上の価値を見出せないと言わざるを得ない作品がただただ量産されるだけになっても困ります。

 

森口先生が事故死しちゃうシーン、僕蔵さんは画的にお気に入りだそうですが、敢えてオーバーリアクションにせず、あ、やべ、みたいな感じだったのが、ミスの小ささと結果の悲劇性の乖離が強調されててとても好きでした。

当初アイデア段階では「タイミングの考察」みたいなタイトルだったそうですが、例えば靴紐に引っかかったのが交通量の少ない歩道やショッピングモールの廊下などだったらコケた時に軽く膝を打つ、くらいに終わる話だったわけで、なんでよりによってそこなんだよ!というのがなるほど「タイミングの考察」がしっくり来ますよね。

 

この作品、決して怪談要素がメインの物語では無いのですが、怪談的視点で見ると面白い部分が幾つかありました。

その中でも最も腑に落ちたところが

森口先生を認識できる人の条件

です。

 

森口先生は一平にしか認識できない存在として描かれますが、ただ1人一平の後輩の沢本には知覚できることが物語の中盤に判明。

てっきり霊感ある人?くらいにしか思っていませんでしたがその後、“沢本も一平と同じタイミングで自殺を図ろうとしたものの、森口先生の死によって命を救われていた”からだ、という事実が明らかになります。

この展開すごく好きですね。

後輩でありながら仕事も順調で順風満帆だと思っていた彼でさえ、思い詰めるところがあったのだ、という一平と観客の気づきはこの作品にとってとても重要なことだと思います。

「誰だって死にたくなる夜もある」

ということ、だから他人と比べたり、羨ましがったりする必要などないのだと。

そして、死に損なったその後も案外何とかやってけるもんなんだ、と。

沢本の事実に気づいた時の森口先生の表情がとっても好きです。

嬉しそうで、ちょっと誇らしげにも見えて。

 

今回登場人物も少なめで、その分一人ひとりの人物像が丁寧に描かれていて、そこもいいなと思いました。

 

森口先生の娘の綾ちゃんは、とても気が効いて挨拶やお礼の連絡など行き届いていて「キチンとした躾を受けたお嬢さんなんだろうなぁ」と感じました。

うんうん、そういう子に限ってタチの悪い男に引っかかるんだよなぁ。

若松よ!私、てめぇのこと許してねぇかんな!

 

失礼しましたm(_ _)m

 

この作品を見ていて思ったのですが、自分が死ぬはずだった列車で死んでしまった人について調べあげて葬儀にまで参列してしまう、この点に関谷一平の生きづらさが凝縮されているのではなかろうか、と。

描かれていませんが、おそらく沢本は「うわ、俺なんてとこしようとしてたんだろ。でも、列車止まって助かったー。ツイてたわ、俺」で済ませられる人物なんじゃないかしら、と。

というか、普通は大抵そうですよね。

でも、それを執拗に調べ上げ、葬儀会場までしらみ潰しに探していく、なんて、普通警察くらいしかしません。

森口先生は「ろくでもない」と揶揄しますが、決して浅はかな好奇心とか物見遊山的なノリではなかったはずで。

「結果的に助けてもらった形になった、ある意味命の恩人について何も知らないままでいいのか?お焼香のひとつもあげるべきなんじゃないのか?」

きっとこういう考えだったハズで、この「イチイチ気にしてたらキリがないようなことに引っかかって慮ってしまう」

ということが一平最大のウィークポイントであり、またかけがえのない長所とも言えるのではないかなと。

ちょっと異常なまでの執着でしたよね。

最初「この時から既に森口先生に魅入られてた?おびきよせられてる?」と思ったくらいの異様さでした。

 

森口先生の「お前は誰だ!何しに来た!」と激しい詰め寄りで魅入られてた説は消えましたけども。

いや、そんなに怒ることかよ?

と、とにかく理不尽極まりなくて一平がただただ気の毒。

「俺のおかげて助かったんだから俺の望みを聞く責任がある」などとよく分からない理屈を押し付けてくる、高圧的なタイプの人間(幽霊?)という印象ですが、本当に森口友宏ってそういう人だったのかな、と。

 

妻の葬儀でのエピソードなどから察するに、実は実直で穏やかな人物だったんじゃないだろうか、教師としても、もちろんゆとり以前からの勤めだろうから今みたいに生ぬるいことは無いだろうけど、厳しくもとても優しい先生だったんじゃないかなぁと思います。

 

自分の人生について「よく覚えていない」と発言しているところからも、死後は生前のパーソナリティを継続できない、のかなとも思うのです。

これ、日頃から怪談ばっかり聞いてる自分だからこその視点だと思うのですが、まぁもうちょっと付き合って。

 

付き合ってぇ🤗🤗🤗

 

同音異義語感が半端ないな💦

失礼しましたm(_ _)m

 

死んで化けて出るって相当執着がある状況で、今回は邪魔なアイツを何とかしたいという一念で。

だから、この幽霊は森口友宏さん本人、と言うよりも

「娘の元旦那をなんとかしてやりたい」

という怨念の具現化、と言った方が近いんじゃないかなぁと。

だから粗暴で高圧的なのかなとかね。

あるいは幽霊になったら細やかな感情がなくなって、色んな意味で粗くなっちゃうのかな、なんて、これ、怪談好きな人じゃなきゃわからない感覚だと思うので、もう、スルーしちゃってくださいm(_ _)m

 

ただ、「何故一思いに殺らなかった!」と詰め寄るシーンを見ながら「もしかして、これ、自分に言ってる?」と感じました。

 

亡くなる直前の森口先生、かなり思い詰めた感じで唸り声まで上げてて、だからこそ自殺だと勘違いされたんだろうけど、あの雰囲気から察するに「ただ見張ってただけじゃなくて、もしかして殺害の機会を伺ってたんじゃないか?あの日も本当は殺してやろうと思ってたけど結局出来なくて、それであんな感じで傍目にもヤバい雰囲気だったんじゃないのかな?」とかね。

 

そう思って見てみるとあの詰め寄りの気迫にも得心が行くんですよね。

 

まぁ、一平の立場からすると「知らんがな」の一言に尽きるのですが。

 

そう、森口先生って一平にとっては理不尽極まりない存在で一歩間違ったら観客も引いてしまうと思うのだけれど、何故か憎めないというか逆に惹き込まれてしまうのは僕蔵さんの俳優としての技量と人間的魅力ならこそだなぁと思います。

連呼される「関谷一平よ!」がシーンごとに様々に様相を変えて雄弁で。

狂気性と暖かみを絶妙なバランスで兼ね備えているからこその魅力なのだろうなぁと。

観客に色々想像させる表情が1カット毎にどれも画になる。

個人的には「ピラティス」の稽古を引きで見てる森口先生の表情がめっちゃ好きでした。

ビジュ的に(´>∀<`)ゝ

 

個人的趣味は置いといて…💧

 

自殺未遂、人身事故、殺害依頼、DV…と出てくる要素はどれも陰鬱なものばかりなのに何故か物語自体は面白い、というのがこの作品の魅力的な部分。

 

「悲劇と喜劇は表裏一体である」ということを改めて感じましたし、さらに物語とは別の喜劇(コント)が劇中劇として登場してきて、構造としても非常に面白い。

そしてそのコントが森口先生の人となりを伺わせる要素にもなっていて秀逸。

 

コントと言えば、一平がお笑いの構成作家だと知って綾の強ばった表情がぱぁっと明るくなって目が輝くあの変わりようが非常に印象的で、好きなシーンでもあります。

 

後は一平の食事が成人男性のそれとは思えないほどに質素だったのに、ラストで初めてラーメンというまともな食べ物が登場することにも、一平の心の救済を暗示しているようで、というか単に母親目線として「マトモなもん食べれるようになって良かったねぇ」と感じました。

 

だって最初、たい焼きすら食べられなかったのに!

 

まぁ、そのラーメンも手をつけずに幽霊とのコント作りに没頭して行っちゃうんですけれどもね。

 

そこでやっぱり、この男の物語は「……To be continued」なんだな。頑張れ、関谷一平よ!私も頑張るからさ!

 

となるんですよね👻

 

良き作品と出会えたことに、感謝🙏✨

 

いつもながら支離滅裂で相すみませぬm(_ _)m