オリジナル創作 「おじさんロイド」 第6話


初めていらっしゃった方で今後も遊びに来てやろうかと思って下さる大変奇特な方は是非「ぼくようびのトリセツ」(https://blogs.yahoo.co.jp/uzukinokimi/36144883.html)も合わせてお読みください。
ちょくちょくお越しいただいている方も、結構頻繁に更新していたりするのでたまーに見返していただけたらありがたいです(^ω^)
随時コメント大歓迎!忌憚のない感想をお寄せいただければ幸いです♪


前回、ついに結ばれた一人と一台。

しかし、今回思いもよらない展開に!



 あの夜を境に一人と一台の関係は主人とお手伝いから“恋人同士”へと様相を変えた。
 休みの日には決まって外出した。


 休日のアウトレットモールで手をつなぎ歩く一人と一台。

 マナブ「みなさんジロジロ見てますよ。やはり、人間から見ると私の動作は不自然なのでしょうか?」

 香織「そういうんじゃなくて、おじさんと美女が“なかこよ”なのが不思議なだけなんだよ」

 マナブ「おじさんじゃありません!マナブです」

 香織「わかってるって」

 マナブ「それに…」

 香織「何?」

 マナブ「香織さんの目鼻立ちのバランスから人工知能が算出した“美人係数”はほぼ平均値であり、“美女”と形容するには数値が少々低いです」

 香織「何をー!」

 マナブ「ごめんなさい」

 香織「でも、マナブくんのそういうとこ、好きよ」

 マナブ「私は香織さんの全てが好きです」

 香織「ちょ…そ、そんなこと言ったって、許してあげないんだからね」

 マナブ「許してもらえなくても構いません。私は香織さんの…」

 香織「もうそれは言わないって、約束したでしょ?」

 マナブ「アイムソーリー」

 香織「緊張緩和アプリ、結構いい感じだね」

 マナブ「はい」


 3度目のモニター調査。

 博士「そんなことは…ありえない」

 香織「ありえないかもしれませんが、実際彼は私のことが好きなんだそうです」

 博士「もとより、『~したい』という言動自体が信じられん…」

 ヒアリング中に博士の助手がノックもせずに入室する。

 博士「なんだね?」

 助手「マナブの様子がおかしくて。その…体も人間のようになりたい、と言ってきかなくて…」

 博士「やはり雨に打たれてどこかおかしくなってしまったのか…。とにかく一度診てみて、不具合が見つかったら修復しよう」

 香織「待って!そのままに、しておいてもらえませんか?」

 博士「しかし、人間とアンドロイドの恋愛など、倫理上許されるべきものではない。君たちの未来にあるのは、何だね?」

 香織「え?」

 博士「このまま交際し続けても、あなたは命を宿すことはできない。それに、いつかあなたは彼の年齢を超えるのですよ。そういうことを考えたことがあるかね?」

 香織「それは…」

 博士「所詮、アンドロイドは人間にはなれないんだよ」

 香織「確かにそうかもしれない。でも、人間そっくりのアンドロイドを作っておいて、それはちょっと…無責任じゃありませんか。それこそ、このようなことが起こることくらい考えが及ばなかったのですか?」

 博士「はは、言ってくれるね…。私の負けだよ。君たちの好きにしなさい」

 助手「博士…」

 博士「マナブは今のままにしておいてあげなさい。さぁ、これからアンドロイドの恋愛感情の抑制方法について、またイチから検討し直そう」

 助手「ですが…」

 博士「そのための『モニター調査』だろ?」

 香織「ありがとうございます」

 博士「もうこれ以上君たちの関係性に干渉するつもりはないが、今一度、さっき私が言ったことを思慮してみてくれたまえ。君の将来に関わる重大な問題なのだから」

 香織「えぇ。あの…」

 博士「なんだい?」

 香織「電源が切られている時に動くことって、可能ですか?」

 博士「は?そんなことは…あり得ないが、なんでまた?」

 香織「いいえ。失礼します」

 3か月後。
 
 マナブが来てから半年。
 6度目のモニター調査の前日。

 恋人になって約3か月。マナブとの生活が落ちついてくるにしたがい、香織は崇史の『マナブがこちらを向いていた』という発言が気になりだした。

 マナブ「どうしました?」

 香織「いや、ちょっと気になることがあるんだけど…」

 マナブ「何ですか?」

 香織「あのね、崇史が、電源が切られていたはずのマナブくんが『こっちを見てた』って言ってたの。たぶん気のせいだとは思うんだけど…」

 マナブ「気のせいなんかじゃないよ」

 香織「え?」

 マナブ「僕は見ていた。君とあの男が触れあっているところを」

 香織「でも、電源は切られてた。私確認したもの」

 マナブ「これのことかい?」

 そう言いながら首元の電源スイッチを勢いよくべりべりとはがす。

 香織「マナブ、くん?」

 マナブ「飲みこめない、といった顔だね。だったら教えてあげよう。僕はアンドロイドなんかじゃ、ない」

 香織「そんな、冗談でしょ?」

 マナブ「冗談なんかじゃないよ」

 不気味な笑みを浮かべ、香織ににじりよるマナブ。

 あとずさる香織。

 香織「で、でも、あなたは食事も取らないしトイレにも行かない」

 マナブ「お嬢さーん、そんなの君が仕事に行ってる間になんとでもできるでしょ?」

 香織「一体、何の目的で?」

 マナブ「決まってるでしょ?若い女の子の部屋に上がりこむため、だよ。アンドロイドのHPもそのために僕がつくったんだー。どう?手が込んでるでしょー」

 香織「近づかないで!」

 マナブ「毎晩チューしてるのに、そんなにつれないこと言わないでよー」

 香織に抱きつく。

 香織は恐怖で体が凍りつき、身動きが取れない。

 香織「じゃぁ、博士たちは?」

 マナブ「僕がお金で雇った役者さんたち。僕ね、親の遺産が死ぬほどあるんだぁ。だから、働かなくても一生食べていけるのね。で、暇をもてあましてるときにこの計画を思いついたの。ステキでしょ?」

 香織「でも、どうしてずっとアンドロイドのふりを続けていたの?部屋に上がりこむのが目的だったら、その日のうちに正体をばらしてもよかったんじゃないの?」

 マナブ「全く、情緒が無いなぁ、お嬢さん。アンドロイドとして、それを信じて疑わない純情な乙女と一緒に暮らすのが、楽しいんじゃない。いつばれるやもしれないと、ドキドキしながらねー。ふふふ」

 香織「そんな…」

 マナブ「君の方から抱きついてきてくれたときは嬉しかったな―。何しろ、どうやって好きになってもらえるかいろいろ模索してたところだったからねぇ。まぁ、あの時に襲ってもよかったんだけどさぁ、もう少し遊んでからでも悪くないかなって…。さてと、もう半年も待ったんだ。そろそろいただくとしよっかなぁ」

 香織を押し倒すマナブ。

 香織「イヤ!やめて」

 マナブ「どうしてやめなきゃいけないの?こんなに大好きなのに。君も僕のこと好きって言ってくれたじゃない。博士にも、不具合を直さないでくれって、お願いしてくれたんでしょ?」

 香織「それは…あなたがアンドロイドだって信じていたから」

 マナブ「マナブくんが人間だったらよかったのに、って言ってくれたの、あれは嘘だったの?」

 香織「そ、それは…」

 マナブ「酷いよぉ…。でも、僕も嘘ついてたんだもんねー。許してあ・げ・る。だから、もうイヤだなんて言わないで。ね?」

 必死に抵抗する香織。

 マナブ「ほんとはこういうの出したくないんだけど、大人しくしててもらわないとやりづらいから、仕方ないか…」

 ズボンのポケットからサバイバルナイフを取り出し、香織の耳元に口を近づける。

 マナブ「今度ちょっとでもイヤがったら、これでおイタしちゃうぞ。大好きな香織ちゃんの体、傷つけたくないから素直に言うこと聞いておくれね」

 香織「イヤー!」


~続く~




香織の運命やいかにっ!
次回、衝撃のラスト!

ジェットコースター的展開の先に待ち受けるものとは一体?